クエーサーは活動銀河とほぼ同様の特徴
クエーサーは活動銀河とほぼ同様の特徴を示すので、多くの研究者がクエーサーの放射を小さな活動銀河と比較してきた。クエーサーの正体として最も有力な説は、クエーサーは大質量ブラックホールをエネルギー源に持っている、というものである。クエーサーの強力な光度は、大質量ブラックホールを取り巻く降着円盤のガスや塵がブラックホールに落ち込む時の摩擦によって生み出されていると考えられている。この物理過程では落ち込む質量の約50%をエネルギーに変換することが可能で、核融合によるエネルギー変換が質量の数%にとどまるのに比べて非常に変換効率が良い。1040 W というクエーサーの平均的な光度を生み出すには、大質量ブラックホールは1年あたり恒星を10個飲み込む計算になる。現在知られている最も明るいクエーサーの場合には、毎年1000太陽質量程度の物質を消費しているだろうと考えられている。
またクエーサーは、その周辺の環境によって「スイッチ」が入ったり切れたりすると考えられている。例えば、上に挙げたような割合で100億年も「餌」となる物質が供給され続けることはないと思われる。このメカニズムは、なぜクエーサーが初期の宇宙にのみ見られるのかという問題にもうまく説明を与える。つまり、降着円盤によるエネルギー生成は、大質量ブラックホールの周囲の物質が全て消費し尽くされると停止するのである。このことから、我々の銀河系を含むほとんどの銀河は過去にクエーサーの段階を経験し、現在は中心のブラックホールに質量が供給されていないためにエネルギー放射活動をしない平穏な状態にある、とも考えられる。
クエーサーは、ビッグバン後に宇宙の再電離が始まった時期についても手がかりを与えている。クエーサーのスペクトルを観測すると、クエーサーと我々の間にある様々な物質による吸収線が見える。この吸収線をガン・ピーターソンテストという以下の手法で調べることで、宇宙の再電離が始まった時期を推定できる。
観測するクエーサーが、再電離が起こるより前の(赤方偏移が大きい)時代にある場合、クエーサー周辺の銀河間ガスは中性水素の状態になっているため、クエーサーのスペクトルを見ると、水素のライマンα線より短い波長の光は中性水素によって全て吸収され、連続的な吸収領域が見える。逆にクエーサーが再電離後の(赤方偏移が小さい)時期に存在する場合、銀河間ガスは全て電離水素になっているため、ライマンα線より短い波長域には連続的な吸収は見られず、クエーサーと我々の間に断片的に存在する中性水素の雲によって所々に鋭い吸収線が密集するライマンαの森と呼ばれるスペクトルを示す。前者のような連続的な吸収域を持つ古いクエーサーは長く見つかっていなかったが、21世紀に入って z = 6 付近のクエーサーが見つかるようになるとこれらのスペクトルにガン・ピーターソン効果による吸収域が発見され、再電離前のクエーサーではないかと考えられている。
クエーサーのもう一つの興味深い特徴は、ヘリウムより重い元素を含むことが分かっていることである。このことは、ビッグバンの後、最初のクエーサーが生まれるまでの間に銀河が恒星(種族IIIの星)を大規模に生成する時期があったことを示唆している。しかし2004年現在、このような第1世代の星が存在した証拠はまだ発見されていないため、今後数年の間にこの種の星が見つからず、重元素を生み出す他のメカニズムも発見されない場合には、現在我々が考えている初期宇宙のシナリオは大きく修正を迫られるかもしれない。
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